病気について

経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト)の説明

(2025/09/16)

 昨年度から従来の不活化インフルエンザワクチン(皮下注射ワクチン)に加え、新しく経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト)点鼻液)が使用できるようになりました。以下に特長を述べます。
 ワクチン使用株が日本製ワクチンと異なります。フルミストはWHOでの推奨株で製造、日本では国立感染症研究所がWHOの推奨する株の中から期待される有効性、供給可能量を踏まえて選定しています。使用株は違いますが効果には問題がありません。今年度の株は、フルミストはA型株(ノルウエー、タイ)、B型株(オーストリア)、日本製はA型株(ビクトリア、パース)、B型株(オーストリア)です。
 フルミストは弱毒生ワクチンのため、不活化ワクチンの日本製に比べ抗体産生力が強いと考えられます。生ワクチンのため投与後に発熱、咳、鼻水、頭痛など軽い感冒様症状が生じることがあります。
接種方法:両方の鼻腔内に噴霧1回、経鼻噴霧なため鼻粘膜に局所免疫(分泌型IgA抗体)が出来るので感染予防効果が高まることが期待されます。
接種回数:1回で済み注射による痛みが全くありません。
製造、販売:アストラゼネカ社、第一三共
対象者:2歳以上19歳未満
効果持続:約1年間(日本注射ワクチンは約5か月間)
禁忌:免疫抑制剤服薬者、ゼラチンアレルギーのある人
効果:
(第一三共)
2016/2017シーズン、日本人対象2歳以上19歳未満
 フルミスト投与群:発症152/595例、発症率25.5
 非接種群:    発症104/290例、発症率359
           発症予防有効率:288
  同年、海外での有効性:経鼻弱毒生ワクチンと不活化ワクチンは同程度
(小児に対するインフルエンザワクチン分科会資料、厚生労働省、2024523日)
不活化ワクチンの有効性に関する知見
     2013年から継続調査(6か月~15歳以下):有効率40%程度
     2022/2023、小学生対象:有効率41
まとめ:この分科会では、経鼻ワクチンと不活化ワクチンの調査時期が異なるが、共に一定の有効性が認められ両者に明らかな差はない。有害事象についても両者に差がなく安全性に重大な懸念はないと結論付けています。
 昨年度、当院ではフルミストを80人に接種し、そのうちインフルエンザに8人(10%)罹患しました。フルミストと同じ対象年齢で不活化ワクチンを接種した人は380人で、判明している罹患者は23人(6.1%)ですが、罹患の有無が明らかな人は210人ですので11.0%です。従って不活化ワクチン接種者の罹患率は6.111.0%の範囲と考えられ、フルミストとは有意差は認められません。罹患率については今年度も調査する予定です。
 接種料金が従来の不活化ワクチンに比べ割高になりますが受診回数が1回で済みます。2歳から12歳(小学6年生)の小児で接種を考えてみてください。13歳以上(中学生)は従来のワクチンでいいと思います。
 米国、日本小児科医会では5歳未満の喘息児、重度の喘息児には推奨していません。当院では喘息児を含めフルミスト接種による副反応は1例もなく、安全性については問題ないと思います。まだ経験の浅いワクチンですので有効性や安全性などについては今後明らかになっていくと思います。
  接種料金:8000円
(今年度も小学生以下の小児に対して1000円の補助があります)

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